金剛の箭(や)もて貫け我が心(むね)を 杵(しょ)もて貫く君の蓮華を
滴塵008
本文
金剛の箭(や)もて貫け我が心(むね)を 杵(しょ)もて貫く君の蓮華を
形式
#短歌
カテゴリ
#6.情愛・人間関係
ラベル
#修行 #精神 #比喩 #密教 #蓮華
キーワード
#金剛 #箭 #心 #金剛杵 #蓮華 #貫く
要点
強烈な愛情や精神的衝撃が互いの心を貫く比喩。
現代語訳
金剛の矢で私の心を貫き、金剛杵で君の蓮華のような心をも貫く。
注釈
金剛の箭:鋭く破壊的な比喩。真理や仏の智慧の象徴であり、同時に揺るぎない力。愛染明王の持物
杵:金剛杵のこと。男性原理、智慧や方便の象徴。愛染明王の持物
蓮華:密教のシンボル。女性原理、慈悲や清浄の象徴。愛染明王の持物
解説
愛情表現を武器や修行法具の比喩で描き、情愛と精神性の二重性を強調する短歌。金剛の箭は激しい衝撃や破壊力を、金剛杵と蓮華は修行や精神性および肉体の象徴として用いられており、恋愛が単なる感情のやり取りにとどまらず、魂や精神を貫く力を持つことを示す。愛の力と修行の道の並行性、身体と精神の交感を鮮やかに描き出しており、読む者に内面の緊張と浄化の感覚をもたらす。
深掘り_嵯峨
滴塵007の激しい感情が、ここでは密教の法具を用いた究極的な結合の祈りへと昇華されています。
「金剛杵」(男性原理/智慧)と「蓮華」(女性原理/慈悲)は、密教の「歓喜仏(ヤブ・ユム)」が象徴する二元性の合一を意味します。これは、単なる肉体的な愛を超えて、智慧と慈悲、自己と他者という二つの真理が完全に溶け合うことで、究極の悟り(快楽/歓喜)に達しようとする、哲学的かつ情熱的な願いが込められています。